質問
ECCSでフォントを埋め込んだPDFファイルを作成したい。
回答
TeX/LaTeX の場合を除いては、基本的には標準通りの操作および設定でフォントが埋め込まれるはずです。TeX/LaTeX の場合には、基本的には操作および設定に若干の変更が必要です。
操作方法については、「具体的な操作方法」をご覧ください。明らかにフォント情報が欠けているなど、何らかの不具合がある場合には、異なる操作方法をお試しになるか、「参考情報」をご覧ください。
注意 フォントを埋め込んだ Adobe PDF 文書は運用方法が制限される(正しくない運用方法をとると、場合によっては違約金を支払う必要があったり、告訴されたりする)ことがあります。より詳細な情報については、「フォントのライセンス(使用許諾)」をご覧ください。
具体的な操作方法
Mac環境
一般
簡単で汎用性のある方法としては、印刷ダイアログ左下から「PDF」を選び、PDFを作成するとよいでしょう。OS X(MacOS X)の機能で作られたPDFファイルはフォントが埋め込まれます。
Microsoft Office
Microsoft Office(Word、Excel など)の標準機能(「名前を付けて保存」)でPDFファイルを作成した場合は、通常はフォントが埋め込まれるはずですが、何らかの理由でダメだった場合は上の方法(「一般」)を使用してみてください。
Windows環境
Microsoft Office
Microsoft Office(Word、Excel など)の標準機能でPDF/A-1を作成できますので、フォントが埋め込まれます。
Adobe PDF 文書ファイルを作成するには、「名前を付けて保存」(Word 2010 の場合には、リボンの「ファイル」→「名前を付けて保存」)または「PDF/XPS ドキュメントの作成」(Word 2010 の場合には、リボンの「ファイル」→「保存と送信」→「PDF/XPS ドキュメントの作成」)を選択し、「ファイルの種類」で「PDF (*.pdf
)」を指定します。
注意(教育用計算機システム(ECCS)には該当しません) Office 2007 では、Service Pack 2 以降を適用していない場合には、Adobe PDF 文書ファイルを作成できません(実は、Beta 1 では標準で可能でしたが、Beta 2 ~製品 Service Pack 1 ではこの機能が公式アドインとして別提供になりました)。Web ページで配布されている公式アドインを導入するという手もありますが、基本的には Service Pack 3 の導入をお勧めします。
注意 Microsoft Office の機能の制限により埋め込めないフォントについては、文字がラスター画像として描画されます。この場合には、文字として選択したり検索したりすることができず、Adobe PDF 文書ファイルが大きくなります。
参考:I love software2! – PDF/A の作成方法(準拠レベル A)
TeX/LaTeX
注意 具体的な操作方法はお使いの TeX/LaTeX 配布形態やバージョンによって異なります。ここに記述されているものは、2014 年 3 月時点での教育用計算機システム(ECCS)に導入されている配布形態・バージョンに基づきます。
注意 個人で所有しているコンピューター環境でフォントの埋め込んだ Adobe PDF 文書を作成したい場合、フォントの導入方法に制限が加わることがあります。より詳細な情報については、「フォントのライセンス(使用許諾)」をご覧ください。
以下の記事において、「dviware」とは、TeX が作成した DVI ファイル(*.dvi
)を処理するアプリケーションソフトウェアのことです。
dviware として DVIPDFMx を使用する方法
(Macintosh 環境、Windows 環境共通) 通常通り、コマンド「ptex」または「platex」(publishing TeX)を使用して TeX/LaTeX 文書ファイル(*.tex
など)から DVI ファイル(*.dvi
)を作成し、オプションを指定せずにコマンド「dvipdfmx」(DVIPDFMx)を使用すると、日本語部分でフォントが埋め込まれない Adobe PDF 文書ファイル(*.pdf
)が作成されます。例えば、LaTeX 文書ファイルの名前を「foo.tex」として、コマンド(*)
platex foo.tex
dvipdfmx foo.dvi
を実行すると、日本語フォントの埋め込まれていない Adobe PDF 文書ファイル「foo.pdf」が作成されます。
(Macintosh 環境) 上記のコマンド(*)の代わりに、コマンド
platex foo.tex
dvipdfmx -f ptex-hiragino.map foo.dvi
(2 行目が変化しています)を実行すると、日本語部分には OS X に標準搭載されているヒラギノフォントが指定され、かつ、それが埋め込まれます。なお、「ptex-hiragino.map」は、ディレクトリー「/opt/local/share/texmf/fonts/map/dvipdfm」に存在するフォント定義ファイルです。
(Windows 環境) 上記のコマンド(*)の代わりに、コマンド
platex foo.tex
dvipdfm -f otf-ms.map foo.dvi
(2 行目が変化しています)を実行すると、日本語部分には Windows に標準搭載されている MS 明朝と MS ゴシックが指定され、かつ、それが埋め込まれます。なお、「otf-ms.map」は、ディレクトリー「C:\texlive\2011\texmf-dist\fonts\map\dvipdfmx\japanese-otf」に存在するフォント定義ファイルです。
注意 Macintosh 環境に導入されているヒラギノフォントは、Windows 環境には導入されておりません。個人で所有されているコンピューターの Windows でヒラギノフォントをご利用になりたい場合には、市販のパッケージ「千都フォントライブラリー OpenType Creative シリーズ OT-00 ヒラギノ基本 6 書体パック Ver.8.1」をお買い上げください。
参考情報
フォントが埋め込まれているかどうかの調べ方
Adobe Reader の「文書のプロパティ」(または、メニューバーの「ファイル」→「プロパティ…」)のタグ「フォント」で確認できます。ここで、「埋め込み」または「埋め込み サブセット」と表示されているフォントは Adobe PDF 文書に埋め込まれており、それ以外のフォントは埋め込まれていません。
フォントの埋込み禁止属性
フォント自体に埋め込み禁止属性が指定されている場合は、埋め込むことはできません。使用しているフォントについて確認してみてください。
- フォントの埋込み可否属性は、TrueType/OpenType フォントではテーブル OS/2 の エントリー fsType にあり、この値が 2 だと埋込み禁止、二進法における 512(0x200)の位が 1 だとビットマップ部分のみ埋込み可(通常のアウトライン部分は埋込み不可)になります。PostScript フォントにも、これと似たフィールドが用意されていることがあります(が、これは PostScript フォントとしては必須ではありません)。
- 昔の Microsoft Office に付属していたリコー製 TrueType フォント(HG ゴシック E-PRO、HG 正楷書体-PRO、HG 丸ゴシック M-PRO)は、fsType の値が 2 のため、埋め込めません。(今のものは埋め込める…でよいのでしょうか?)
- 参考資料 Adobe Acrobat 7.0.5 – Font Embedding Guidelines for Adobe Third-party Developers OpenType specification – OS/2 and Windows Metrics – fsType
印刷所への入稿
印刷所に入稿する際どうしても失敗したくないなど、最高レベルの水準を求められる場合は、Adobe Acrobat を使用しましょう。教材支援サービスの編集教室利用を申請すると、編集環境端末で使用可能です。
- Adobe Acrobat は Adobe PDF 文書を取り扱うソフトウェアの中でもリファレンスデザイン(機能を実装する上での手本となるもの)にあたりますので、これが確実です。 次点はその他の Adobe Systems 製のソフトウェア(Adobe InDesign など)で、こちらもほぼ確実です。
- 印刷所に入稿する場合、特に印刷料金の安い印刷所に多いのですが、入稿する Adobe PDF 文書がいくら Adobe PDF 文書としては正しくても(Adobe PDF 文書の仕様書に準拠していても)、Adobe Systems 製以外のソフトウェアで作成されたもの(dvipdfm/DVIPDFMx、Ghostscript や、OS X などで作成されたもの。通称「野良 PDF」)は受理されないことがあります。これは、印刷所で使用する面付けソフトウェアが、「野良 PDF」を正しく処理できなかったり、そもそも印刷所が「野良 PDF」の印刷検証を行っていなかったりするためです。
フォントのライセンス(使用許諾)
一般には、フォントを購入しても、それは所有権ではなく、限定的な使用権を取得したものにすぎませんので、残念ながら、何をしてもよいわけではありません。何ができるのかは、フォントベンダー(販売者)によって異なります。詳細については、各フォントベンダーにお問い合わせください。
- 一部のフォントベンダーは、フォントを埋め込んだ Adobe PDF 文書を(無償であっても)不特定多数に配布したり、有償で配布したりする(これらは、「商用利用」や「2 次利用」などの表現をとることがあります)ことに対し、別契約(別料金)を要求しています。
- 一部のフォントベンダーは、動作環境で指定されている基本システム(オペレーティングシステム)(通常は Mac OS と Windows)以外の基本システム(例 Linux)にフォントを導入したり、通常の方法として指定されていない方法(例えば、通常の方法が専用のインストーラーを使用するものとして、それに対して、「通常の方法として指定されていない方法」として、単にフォントファイルをディレクトリーに複写・移動する)でフォントを導入したりすることを禁止しています。
以下の一覧は、公開されている情報を基に、フォントを埋め込んだ Adobe PDF 文書を不特定多数の人および機関などに配布するのに、別契約(別料金)が必要かどうかを示しています(2014 年 3 月現在)。分類はフォント単独の買取パッケージおよびダウンロード販売の場合を基準としていますが、詳細については、販売形態で異なることがあります。参考情報なので無保証であり(内容が間違っている可能性もあります)、網羅的でもありません。また、事実は時により変化することがあります。そのため、ここに掲載されている情報は参考情報とし、正式な情報については、各フォントベンダーにお問い合わせください。
- 別契約が不要なフォントベンダー
- (OS X に付属のヒラギノフォント)
- (Windows Vista 以降に付属の MS 明朝、MS ゴシック) Windows XP までは、Microsoft は使用条件をフォント提供元に任せる方針でした。MS 明朝と MS ゴシックはリコーによって制作・提供されたものなので、リコー製の他のフォントと同様に、以前は別契約が必要でした(消費税が 5%の時代で 17,850 円/和文書体)。
- Adobe Systems
- イワタ
- 字游工房
- SCREEN グラフィックアンドプレシジョンソリューションズ(旧: 大日本スクリーン製造) 以前は別契約が必要でした(消費税が 5%の時代で 17,850 円/和文書体)が、現行の Creative シリーズからは不要になりました。
- タイプバンク モリサワに買収されてからは、使用条件がモリサワのそれと同じになりました。旧リョービフォントもこれに含まれます。
- フォントワークス 基本的にはカタログに記述されています。ただし、営利目的での利用が不可能な学生向け LETS については不明(問い合わせを強く推奨)です。
- モリサワ ただし、営利目的での利用が不可能なアカデミック版については不明(問い合わせを強く推奨)です。
- リコー デザインポケットでダウンロード販売されているフォントはこれに該当しますが、他はそうとは限りません。
- (TrueType フォントパーフェクトコレクションに収録されているフォント) 奥付に可能な用途が記述されていますが、こちらも参考になりましょう。
- 別契約が必要なフォントベンダー
- エヌアイシィ ニィスフォント。商用使用可能製品を購入した上で別途契約することになります。個人使用限定製品では契約そのものができず、よって、別契約が必要なことを行えません。
- ダイナコムウェア
- モトヤ 10,800 円/和文書体、または、54,000 円/事業所を支払う必要があります。
- リコー ダウンロード販売以外のものは、別契約で 18,360 円/和文書体を支払う必要がある場合があります(パッケージ「TrueTypeWorld ValueFontD2」はこれに該当します)。
- Monotype Imaging、および、その子会社(Bitstream、Linotypeなど)
ちなみに、可変レイアウトの電子文書(EPUB などの電子書籍)では、別契約なしでフォントを埋め込んだものを不特定多数の人および機関に配布することを許容している日本語フォントベンダーは、ほとんどないようです(フォントとして機能するから、という理由が多くあります)。フォントワークスは可だそうです。